
入れ歯は「第二の歯」とも言える大切なパートナーです。
毎日のケアを怠ると、細菌が繁殖してしまい、口臭や口腔カンジダ症を引き起こし、お口全体の健康にも悪影響を及ぼします。
そんな入れ歯のケアに欠かせないのが「入れ歯洗浄剤」です。
しかし、入れ歯の種類によって最適な洗浄剤は異なることをご存知でしょうか?
本記事では、部分入れ歯・総入れ歯・金属床・ノンクラスプデンチャーなど、それぞれの入れ歯に合ったおすすめの洗浄剤を、歯科臨床経験20年以上の経験からわかりやすくご紹介します。
あなたに合った入れ歯洗浄剤がきっと見つかるはずです!
入れ歯洗浄剤は主に3種類!
- 発泡系
- 水に溶かすと泡が出て、過酸化水素の力で汚れを落とすタイプです
- 食べかすや着色汚れを落とすのが得意ですが、微生物の除去はやや苦手です
- 部分入れ歯の金属部分(クラスプ)が変色することがあるため、長時間の使用には注意が必要です
- 酵素系
- タンパク質分解酵素で、食べかすやプラーク、微生物などを分解・除去します
- 脱臭効果もありますが、着色汚れにはあまり効果がありません
- 次亜塩素酸系
- 強い殺菌力と漂白作用があり、ヤニや茶しぶなどの着色汚れも落とせます
- 長時間使用すると入れ歯の素材(レジンなど)にダメージを与える場合があるため、使用時間に注意が必要です
このほかにも、生薬系や銀系無機抗菌剤、界面活性剤系、酸系、二酸化チタン系などの成分による分類もありますが、一般的には上記3種類が主流です。
入れ歯の種類に合った洗浄剤を選択することが重要です!
入れ歯の種類の種類と洗浄剤の選び方!
入れ歯の種類 | 発泡系・酵素系(中性~弱アルカリ性) | 次亜塩素酸系(強アルカリ性) | ポイント・注意点 |
---|---|---|---|
部分入れ歯 | ◎(金属パーツ対応の発泡系・酵素系:中性/弱アルカリ性推奨) | ×(金属腐食・変色リスクあり) | 金属パーツがあるため、中性の酵素系・発泡系が安全。次亜塩素酸系は避ける。 |
総入れ歯 | ◎(発泡・酵素系ともにOK) | ○(プラスチックのみの場合はOK) | 強い汚れや臭いには発泡系や次亜塩素酸系も有効。金属パーツ付きの場合は次亜塩素酸系は避ける。 |
金属床義歯(マグネットデンチャー/インプラントデンチャー) | ◎(金属パーツ対応・中性/弱アルカリ性推奨) | ×(金属腐食・変色リスクあり) | 金属腐食を防ぐため、中性や金属パーツ対応の発泡系・酵素系を選ぶ。次亜塩素酸系はNG。 |
ノンクラスプデンチャー | ◎(中性/弱アルカリ性の酵素系推奨) | ×(樹脂変質リスクあり) | 特殊樹脂素材のため、やさしい酵素系や中性発泡系が安心。次亜塩素酸系は避ける。 |
部分入れ歯や金属床には、金属パーツを傷めにくい中性~弱アルカリ性の酵素系・発泡系洗浄剤が適しています。
ノンクラスプデンチャーには、樹脂素材にやさしい中性~弱アルカリ性の酵素系・発泡系洗浄剤、またはノンクラスプデンチャー専用の洗浄剤を選びましょう。
総入れ歯(プラスチック製)には、酵素系・発泡系に加え、次亜塩素酸系洗浄剤も使用できます。次亜塩素酸系洗浄剤は、金属パーツや特殊樹脂を含む入れ歯には適していませんが、プラスチックのみの総入れ歯には効果的です。
上記を踏まえ、入れ歯の種類に合った洗浄剤を紹介します!
部分入れ歯用

部分入れ歯はクラスプという金属パーツがあるため、金属部のキズや腐食が破折の原因になります。中性または弱アルカリ性の「部分入れ歯用」洗浄剤を選びます。
夜間に入れ歯を外して洗浄剤に浸ける方には、錠剤タイプの洗浄剤がおすすめ
就寝中も入れ歯を装着する方には、手軽に使える泡タイプの洗浄剤がおすすめ

総入れ歯用

総入れ歯は歯科用レジンを使っています。金属パーツ(クラスプ)が無いため、発泡系・酵素系・次亜塩素酸系など幅広く使用が可能です。
個人的には、入れ歯の不衛生によっておこる義歯性口内炎や口腔カンジダ症(カビ菌)や口臭、誤嚥性肺炎のリスクを軽減したいので、除菌力の高い酵素系入れがおすすめです。
また、お茶やコーヒーなどの着色汚れや明らかに汚れが目立つ入れ歯は、次亜塩素酸系の洗浄剤もおすすめです。
発泡系と酵素系のダブルで強力洗浄
「ピカ」は、デンチャープラーク(入れ歯の汚れ)に関する微生物学的研究をもとに、全国の歯科補綴学の専門家と協力して開発された入れ歯洗浄剤です。2種類の洗浄剤を使い分けることで、目に見える汚れだけでなく、目に見えない微生物汚れまでしっかり除去できます。特に、カンジダ菌を溶かして除去する作用は「ピカ」ならではの特徴です。

ロートピカは「酵素系」と「発泡系(アルカリ一酸化剤タイプ)」の2種類の洗浄剤がセットになっている入れ歯洗浄剤です。
- 青色包装(錠剤・酵素剤タイプ)
カンジダ溶菌酵素およびタンパク分解酵素を配合した酵素系洗浄剤です。主に毎日使用し、カンジダ菌や食べカス、タンパク質汚れを分解します。 - 赤色包装(顆粒剤・発泡剤タイプ)
週1回程度の使用が推奨されており、発泡作用と活性酸素の力でヤニや黄ばみなどのしみついた汚れを除去します。
着色除去、汚れが多い場合は、次亜塩素酸系洗浄剤

就寝中も入れ歯を装着する方には、手軽に使える次亜塩素系の泡タイプ洗浄剤がおすすめ

金属床用、マグネットデンチャー、インプラントデンチャー


基本は、部分入れ歯用と同じですが、おすすめはコレ!
毎日のご家庭でのケアにおすすめの、洗浄力の高い義歯洗浄剤です。安全性の高い二酸化チタンを配合しており、その触媒効果によってヤニや茶渋などの着色汚れやカンジダ菌をしっかり洗浄・除菌します。さらに、義歯を傷めにくい中性タイプなので安心して使えます。

就寝中も入れ歯を装着する方には、手軽に使える泡タイプの洗浄剤がおすすめ

ノンクラスプデンチャー、シリコーンデンチャー用

スマイルデンチャー専用(ノンクラスプデンチャー)洗浄剤


バルプラスト専用(ノンクラスプデンチャー)洗浄剤


ノンクラスプデンチャー、シリコーンデンチャー洗浄剤
入れ歯の種類が分からない方は、これを使えば間違いない!

就寝中も入れ歯を装着する方には、手軽に使える泡タイプの洗浄剤がおすすめ

まとめ:入れ歯の種類に合った洗浄剤を選ぶことが重要!
入れ歯の種類や素材に合わせた洗浄剤選びは、入れ歯を長持ちさせるだけでなく、お口の健康を守る大切なポイントです。間違った洗浄剤を使うと、変色や破損、金属の腐食などのトラブルにつながることもあります。
今回ご紹介したように、部分入れ歯、総入れ歯、金属床、ノンクラスプデンチャーなど、それぞれに最適な洗浄剤を選ぶことで、清潔で快適な毎日を過ごせます。
「どれを選べばいいか分からない…」という方は、まずは歯科医院や歯科衛生士に相談してみるのもおすすめです。あなたに合った入れ歯洗浄剤を見つけて、健康なお口を保ちましょう!
・入れ歯が合わない方は、コチラ☞あなたに合った「入れ歯安定剤」がきっと見つかる
・入れ歯のお手入れ方法は、コチラ☞【保存版】入れ歯のお手入れってどうするの?
【監修・執筆】とうま
日本歯周病学会認定歯科衛生士/歯科臨床麻酔認定歯科衛生士/ホワイトニングコーディネーター
20年以上の臨床経験を基に、日本歯周病学会認定歯科衛生士をはじめとする複数の専門資格を有し、質の高い医療提供を追求している。
予防歯科、歯周治療、ホワイトニング分野を中心に、専門的知識をわかりやすく伝え、患者さんやそのご家族が安心できる情報を発信。
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