こんにちは、歯科衛生士のとうまです。今回のテーマは、むし歯予防でおなじみの「フッ化物」です。
むし歯予防といえば、「上手な歯磨き」、「甘い食べ物・飲み物のコントロール」、「フッ化物」などがあげられます。
歯科衛生士として、診療する中で患者さんからこのような質問がありました。
「フッ化物?なんとなく、聞いたことがあるけれど、詳しくわからない。」
「歯磨き粉やうがい薬にフッ素入りと書いてあるけど、どれでも効果は同じなの?」
「どのタイミングで使えばいいの?」
「子どもと成人は同じフッ化物の濃度でいいの?」
このような質問を患者さんから聞かれることが多かったため、その質問にお答えします。
今回は第一弾として、「フッ化物洗口」について解説します。読めばそのすべてを理解していただけるようなブログ記事になっています。
結論、むし歯予防に効果的なフッ化物の活用法は、
①フッ化物入り歯磨剤を使い歯を磨く
②就寝前の歯磨き後にフッ化物入り洗口液で30秒すすぐ
③その後は30分うがい・飲食をしない
④歯科医院では定期的に高濃度フッ化物を塗ってもらう
むし歯予防の必須アイテム、フッ化物洗口液を上手に活用し、むし歯にならないお口を目指しましょう。
それでは、詳しく解説していきます。
フッ化物とは
フッ化物を使うことにより、むし歯になりにくい歯をつくります。
1.むし歯菌が作り出す酸を減らします(耐酸性の獲得)
2.フッ化物を取り込んだ歯は、溶けにくい硬い歯に変わります(結晶性の向上)
3.歯の修復をします(再石灰化の促進)
これらを高めてむし歯を予防する方法で、有効性・安全性が確認されています。
また、フッ素は化学的に合成されたものではなく、自然界に広く分布している元素です。
土壌中に280ppm、海水中に1.3ppm含まれています。地球上のすべての動・植物にも、毎日飲む水や食べる海産物・肉・野菜・果物・お茶などほとんどの食品に微量ながら含まれています。私たちの身体(歯や骨、血液中や軟組織)にも存在しています。
詳しい効果(飛ばし読みOK)
1. むし歯菌が作り出す酸を減らします
フッ化物がプラーク(歯垢)中に取り込まれると、細菌の代謝系酵素を阻害して酸産生を抑制します。
同時に細胞膜の透過性を高めて細胞外にフッ化物を出してプラークのフッ化物濃度を高めます。細菌が糖を発酵させて酸を産生すると、プラーク中のフッ化物が脱灰に対して抑制的に働きます。
2.フッ化物を取り込んだ歯は、溶けにくい硬い歯に変わります
フッ化物によって、エナメル質の一部が従来のハイドロキシアパタイトよりも「溶解度」の低いフルオロアパタイトやフッ化ハイドロキシアパタイトとして歯質が強化され、酸抵抗性を持ちます。
3.歯の修復をします
フッ化物が存在することで、歯の溶け始めたエナメル質中のリン酸カルシウムの反応性が高まり、従来のハイドロキシアパタイトから強い歯(フルオロアパタイトやフッ化ハイドロキシアパタイト)に変化していきます。
小学校等でも活用
一定濃度のフッ化ナトリウム溶液(5~10ml)を用いて、30秒~1分間ブクブクうがいを行う方法で、永久歯のむし歯予防として有効です。第一大臼歯の萌出時期(就学前)にあわせて開始し中学生まで続けます。保育園・幼稚園・小中学校で集団実施されていますが、個人的に家庭で行う方法もあります。
フッ化物洗口の実際
1. 洗口頻度と使用する薬剤の濃度
保育園・幼稚園・小中学校で集団として行う場合、週5回法と週1回法があります。
週5回法では0.05%フッ化ナトリウム溶液(フッ化物イオン濃度225ppm)
週1回法では0.2%フッ化ナトリウム溶液(同900ppm)を用います。
週5回法は主に保育園・幼稚園で採用されています。
家庭で使用される場合、歯科医院で購入できる洗口剤(同250ppm)や薬局などで購入できるフッ化物洗口液(同225ppm)を用いて毎日行います。
フッ化物とフッ化物濃度 | 洗口1回に使用するフッ化物量 | ||||
洗口法 | NAF % | F % | F ppm | 洗口液量 | フッ化物量 |
毎日法 | 0.05 | 0.023 | 225 | 5ml | 1.15mg |
週1回法 | 0.20 | 0.090 | 900 | 10ml | 9.00mg |
洗口の頻度には毎日法(毎日1回法、週5日法ともいう)と週1回法があります。
毎日法は洗口液が0.05%フッ化ナトリウム水溶液(フッ化物イオン濃度としては225ppm)と比較的低濃度であることから、保育園や幼稚園児に向いています。1回の洗口液量は5ml(7ml使用のこともある)と少量です。
これに対して週1回法は0.2%フッ化ナトリウム水溶液(フッ化物イオン濃度としては900ppm)と毎日法の4倍の濃度で、1回の洗口液量は10mlで、小学生以上の年齢に向いています。
※毎日法でも週1回法でも効果は同じといわれています。
2. 洗口液の量と洗口時間
1回の洗口液の量*は、就学前の幼児では5~7ml、小学生以上では10mlです。
*洗口液の目安は、ペットボトルのキャップ1杯が7mlです。スクリューの一番上のラインまで注ぐと、およそ5mlの量となります。
洗口時間は30秒から1分間で、砂時計を見ながらあるいは音楽に合わせて行います。
なお就学前の幼児では、真水による「ぶくぶくうがい」と吐き出しの練習をして、上手にできることを確認してから洗口液に切り替えます。
3. 洗口後の注意
洗口後30分間は飲食・うがいを控えます。
保育園では午睡の前に、幼稚園や小中学校では授業の直前に実施されています。
家庭では就寝前の歯磨きの後が適切です。
4.家庭での管理
小さいお子様がいるご家庭では、フッ化物洗口液は保護者が管理しましょう。
決められた分量を守り、一回分だけ渡しましょう。(1回の洗口液の量は、就学前の幼児では5~7ml、小学生以上では10ml)
またフッ化物洗口液の保管場所は、お子様の手の届かないところに保管しましょう。
フッ化物洗口の予防効果
研究報告によれば、むし歯予防効果は約30~80%です。
フッ化物洗口の開始時期は4、5歳が目安ですが、第一大臼歯(6歳臼歯)の萌出時期に合わせた開始と長期間継続することが必要です。真水による「ぶくぶくうがい」と吐き出しの練習をして、上手にできることを確認してからフッ化物洗口を開始しましょう。
また、成人においても隣接面むし歯や根面むし歯の予防に効果的です。
1. 就学前からのフッ化物洗口の有効性
予防効果に関する論文を開始年齢によって分類すると、小学校入学後(6歳)の実施群の30%前後に対し、就学前4歳児から実施した群では、40~80%と、就学前からの実施で高い予防効果を得ることができます。
2. フッ化物洗口終了後の予防効果の持続
施設単位で行われるフッ化物洗口は、中学校卒業で終了します。
終了後のむし歯有病状況を、洗口を経験しなかった群と比較すると、20歳では50~58%の予防効果が報告されています。
フッ化物洗口の普及状況
2016年3月の調査では全国の約12,000施設で約127万人が実施しており、同年の歯科疾患実態調査では、4~14歳における家庭での利用も含めた経験者の割合は17%となっています。
世界的にみると約1億人の小児がフッ化物洗口を実施しています。
フッ化物洗口の種類
フッ化物洗口の種類は、大きく分けて2種類あります。
顆粒と水を混ぜるタイプと初めからフッ化物溶液が出来上がっているタイプに分かれます。
幼稚園や小学校など集団施設で使う場合は、大量にフッ化物溶液を作ることができ、コストを抑えられる為、多くの場合は顆粒と水を混ぜるタイプを使います。
ご家庭で使用するものは、初めからフッ化物溶液が出来上がっているタイプをおすすめします。
家庭用
ご家庭でも簡単に始められる、フッ化物溶液が出来上がっているタイプを紹介いたします。
フッ化物濃度は、225ppmとなっていますので、就寝前の歯磨きの後に「ブクブクうがいが出来るお子様から成人の方まで」毎日使うことができます。
おすすめフッ化物洗口液
ブランド:サンスター
商品:エフコート
第3類医薬品
特徴
・いつものハミガキに加え、1日1回のブクブクうがいで効果的なむし歯予防!
・使用後にお水ですすがないので、フッ素がお口にしっかりとどまる。
・ピリピリしない。
・4歳から大人まで幅広い年代で使える。
・スッキリ感のある大人向けスッキリタイプ。
・フルーツ香味は、刺激感の苦手な方やお子様向けのマイルドタイプ。
おすすめフッ化物洗口液
ブランド:ライオン
商品:クリニカ フッ素メディカルコート
特徴
- 手軽に自宅でフッ素ケア1日1回すすぐだけで、「有効成分フッ素」がすみずみまで行き渡り、歯にしっかりとどまって再石灰化を促進します。
- 初期ムシ歯の修復を助けムシ歯予防フッ素には初期ムシ歯(歯の表面に穴があいた状態(ムシ歯)の一歩手前)を健康な状態に戻す再石灰化を促進する」作用があります。
また、歯垢中の細菌の活動を抑え、酸が作られるのを抑制する作用、歯質を強化する作用があり、これら3つの作用によってムシ歯の発生と進行を防ぎます。
- 4才から大人まで使える
- 子どもも使いやすいライチミントの香味
- 刺激が苦手な人でも使いやすいノンアルコールタイプ
使用方法
- STEP1薬液を計量キャップに注ぐ
- STEP2口に含み30秒~1分間ブクブクすすぎ
- STEP3歯のすみずみまでゆきわたらせる
- STEP4吐き出したら、すすぎは不要
※使用後30分間、飲食はお控えください。
歯科、薬局専用
※下記の商品購入については、歯科医院や薬局にご相談ください。
ブランド:ビーブランドメディコーデンタル
商品:ミラノール顆粒11%
特徴
顆粒と水を混ぜるタイプです。
ミラノールの洗口液は、歯のすみずみまで素早くいきわたるように、また歯へのフッ化物の取り込みを促すよう調整されており、う蝕予防をより効果的にします。
使用期限は、未開封状態で製造から3年間です。
顆粒を水に溶かした後は、室温で40日間ですが、なるべく涼しい場所での保管をお勧めいたします。
また、冷蔵庫での保管では、凍らないように注意してください。
ブランド:GC昭和薬品
商品:オラブリス洗口液0.2%
特徴
初めからフッ化物溶液が出来上がっているタイプです。
小学生以上の週一回法に最適です。ワンプッシュ5ml出ますので小学生以上は、
2プッシュ(10ml)コップに出し、ご使用いただけます。
オラブリス洗口液0.2%|株式会社ジーシー昭和薬品 製品情報サイト (gc-showayakuhin.com)
まとめ
いかがでしたでしょうか?今回は、むし歯予防におすすめ、フッ化物洗口について解説いたしました。
年齢によっては、洗口液の量や濃度、使用頻度が異なりますが、簡単で万人向けのおすすめ商品も紹介しました。
4歳以上のお子様から成人まで幅広い方が対象です。
やるべきことは、毎晩寝る前に「フッ化物洗口液でブクブクしていただく」これだけで、簡単にむし歯になる確率が下がります。
そしてフッ化物洗口を毎日の習慣に取り入れ、歯の健康を意識した生活から日々の豊かな食生活を送れるよう努めましょう。
おすすめの歯ブラシに興味がある方は、こちらから
TePe(テぺ)歯ブラシ、スウェーデンの歯ブラシを歯科衛生士がすすめる理由とテぺ歯ブラシの選び方 – 男性歯科衛生士blog. (oral-health-literacy.com)
こちらのブログでは、お口の中にまつわる様々な情報を発信しております。
よろしければ、ほかの記事も閲覧して頂けると幸いです。
それでは、また次のブログでお会いしましょう。
そして、一緒に歯ッピーライフを目指しましょう!
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