朝起きると顎が疲れる…それ「歯ぎしり・食いしばり」かも|原因とセルフケア・対策を歯科衛生士が解説

歯の健康

朝、目が覚めるとあごのあたりが重い・疲れている。

日中、ふと気づくと歯を噛みしめていて、こめかみや頬が痛い。

奥歯がズキッとするのに、歯医者さんでは「むし歯はないですよ」と言われた——。

その不調、もしかすると「歯ぎしり・食いしばり」が原因かもしれません。

この記事では、20年以上患者さんを見てきた歯科衛生士の視点から、まず自分でできるセルフケア(舌の位置・噛みしめグセの改善)と、それでも改善しないときの専門的な対策(マウスピース・ボトックス注射)まで、順を追ってわかりやすくお話しします。

こんなサイン、ありませんか?(セルフチェック)

  • 朝起きたとき、あごや頬・こめかみが疲れている
  • 日中、気づくと上下の歯を噛みしめている
  • 奥歯がしみる・痛むのに「むし歯はない」と言われた
  • 頭痛・肩こりがなかなか取れない
  • 頬の内側に噛んだ跡、舌のふちに歯型のデコボコがある
  • エラが張ってきた・顔が大きくなった気がする

2つ以上当てはまる方は、歯ぎしり・食いしばりが関わっている可能性があります。

その不調、歯ぎしり・食いしばりかも

歯ぎしり・食いしばりは、専門的には「ブラキシズム」と呼ばれ、大きく2つに分けられます。

🌙 寝ている間(睡眠時) 無意識のうちにギリギリ・グッと噛みしめるタイプ。自分では気づきにくく、朝のあごの疲れで気づくことが多いです。

☀️ 起きている間(日中) パソコン作業・スマホ・集中時などに、上下の歯がそっと触れ続けている状態。これが「TCH」です。

とくに見落とされがちなのが、この日中の TCH(ティーシーエイチ/歯列接触癖)です。

【ポイント:本来、歯が触れている時間はごくわずか】

食事や会話のとき以外、上下の歯は1日のうち合計20分ほどしか触れていないのが正常といわれます。それ以外の時間は、上下の歯はわずかに離れているのが自然な状態です。 ところがTCHがあると、軽い力でも歯が長時間ふれ続け、あごの筋肉が休めません。これが慢性的な疲れや痛みにつながります。

放っておくと起きること

「ただのクセでしょ?」と放置すると、噛む力は意外なほど大きく、さまざまな不調を引き起こします。

🦷 歯への影響 すり減り・欠け・ヒビ、知覚過敏、詰め物や被せ物が割れる・取れる。むし歯がないのに痛む奥歯の正体であることも。

😬 あご・筋肉 あごの痛み、口が開きにくい、顎関節症、咬筋(こうきん)の張りによるエラの張り出し。

🤕 全身への波及 頭痛・肩こり・首のこり。噛みしめのクセは首や肩の筋肉ともつながっています。

😴 睡眠・疲労 夜中の噛みしめで体が休まらず、朝起きてもスッキリしない・日中の疲れが抜けない。

【注意:「むし歯はない」のに奥歯が痛むとき】

レントゲンで異常がないのに痛む場合、噛みしめによる歯の周りの組織への負担や、歯の細かいヒビ、知覚過敏が隠れていることがあります。原因を見極めるためにも、一度かかりつけで相談しておくと安心です。

まずはセルフケア|舌の位置と噛みしめグセを整える

対策というと、いきなりマウスピースを思い浮かべるかもしれません。でも、その前に毎日のクセそのものを整えることがとても大切です。お金もかからず、今日から始められます。

① 舌の「正しい位置(スポット)」を覚える

あなたの舌は今、どこにありますか? 下の歯の裏側にベタッと落ちていたら、それは低位舌(ていいぜつ)のサインかもしれません。

舌の正しい定位置は「スポット」と呼ばれる場所。上の前歯のすぐ後ろ、少しふくらんだ歯ぐきのあたりです。安静時はここに舌全体がそっと吸い付いているのが理想です。

舌がスポットに上がると、自然と上下の歯が離れ、口も閉じやすくなります。低位舌の改善は、噛みしめ対策の土台になるのです。

② オープン&クローズで舌を“上”にキープする

低位舌の人は、口を動かすと舌がすぐ下に落ちてしまいます。舌を正しい位置に保つ力をつけるのが「オープン&クローズ」。やり方はとてもシンプルです。

  1. 舌先をスポットにつけ、舌全体を上あごに吸い上げます(舌を弾くと「ポン」と音が鳴る位置)
  2. その状態をキープしたまま、ゆっくり口を大きく開ける → 閉じる
  3. 開け閉めしている間も、舌が上あごから離れないように保つのがポイント

目安は1日10〜20回。テレビを見ながら、入浴中などのスキマ時間でOKです。

舌を上にキープできるようになると、上下の歯が自然に離れるので、食いしばりの予防につながります。 (やってみて舌が疲れる・つりそうになるのは、舌の筋力が落ちているサイン。続けるうちにラクになります。)

そしてもう一つ見直したいのが「鼻呼吸」。寝ている間に口がポカンと開いてしまう人は、口呼吸 → 低位舌 → 食いしばり、の悪循環に入りがちです。まずは“寝るときに口を閉じる”習慣づけから。鼻呼吸をサポートする口閉じテープを使うと、最初のきっかけがつかみやすくなります。

【あわせて読みたい】 舌や口まわりの筋肉を鍛える「あいうべ体操」もおすすめです。 ▶ あいうべ体操のやり方はこちら

③ 噛みしめグセ(TCH)をやめる

TCHの改善でいちばん効くのは、特別な道具ではなく「気づくこと」です。やり方はシンプル。

【くちびる閉じて、歯は離す】

くちびるは軽く閉じ、上下の歯は触れさせず、舌はスポットへ。これが口の「お休みの姿勢」です。 「歯を離す」と書いたふせんを、パソコン・スマホ・冷蔵庫・洗面所など、よく目に入る場所に貼っておきましょう。見るたびに「フッ」と力を抜くだけで、少しずつクセが変わっていきます。

④ 就寝前に、あごの“こわばり”をゆるめる

食いしばりが強い日は、寝る前にあごまわりがガチガチに張っていることも。そのまま眠ると、夜間の噛みしめも強くなりがちです。

おすすめは「温めてからゆるめる」ケア。蒸気の出るホットアイマスクや温熱グッズで、こめかみ〜頬のあたりをじんわり温めると、咬筋の緊張がほぐれてリラックスしやすくなります。

温めたあとは、咬筋(エラのあたり)を指の腹でやさしく円を描くようにマッサージ。強く押しすぎないのがコツです。手でやりにくい人は、かっさやマッサージグッズを使うとラクに続けられます。


セルフケアで改善しないとき|2つの専門的な対策

セルフケアを続けても、夜間の歯ぎしりや強い食いしばりは無意識のため、コントロールしきれないことがあります。そんなときに検討したいのが、次の2つです。

① ナイトガード(マウスピース)

就寝中に装着するマウスピースです。歯と歯の間にクッションが入ることで、歯のすり減りや割れを防ぎ、あごの筋肉への負担をやわらげます。歯ぎしり・食いしばり対策の、もっとも基本的な方法です。

【市販品と歯科のナイトガード、何が違う?】

ドラッグストアの市販マウスピースは手軽ですが、かみ合わせに合っていないと、かえってあごに負担がかかることも。歯科では型取りをして一人ひとりに合わせて作り、かみ合わせを調整し、定期的にチェックできます。長く安全に使うなら、歯科で作るものが安心です。

とはいえ「歯科に行く時間がなかなか取れない」「まずは今夜から歯を守りたい」という方もいますよね。そんなときの“つなぎ”として、お湯でやわらかくして自分の歯型を取る市販のナイトガード(熱成形・ボイル&バイト型)があります。型取りは1分ほどででき、失敗してもお湯で作り直せるタイプが主流です。

ただし、ここは歯科衛生士として正直にお伝えしておきます。市販の自作タイプはかみ合わせの調整ができず、長く使うと歯が動いたり逆効果になることもあります。あくまで「歯科に行くまでの応急的なつなぎ」と割り切って使い、強い痛みや顎の不調がある場合は、自己判断せず早めに歯科で相談してください。

そして、市販でも歯科製でも、ナイトガードを使い始めたら欠かせないのが毎日のお手入れ。口に入れるものなので、清潔に保つことが大切です。

【お手入れのポイント】

水かぬるま湯で、やわらかい歯ブラシでやさしく洗います。研磨剤入りの歯みがき粉や熱湯はNG(傷・変形の原因に)。手洗いだけだと、においや黄ばみ、ぬめりの原因になる菌が残りがちです。週に数回はつけ置きタイプの専用洗浄剤で除菌すると安心。入れ歯用は漂白成分が強いことがあるので、「マウスピース・ナイトガード対応」を選びましょう。

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外出先や朝のサッとケアには、泡・スプレータイプの除菌洗浄剤が便利。つけ置きと使い分けると、毎日続けやすくなります。

洗ったあとは、しっかり乾かして通気性のあるケースで保管を。湿ったままだと雑菌が繁殖しやすくなります。

② 咬筋へのボトックス注射

もう一つの選択肢が、噛む筋肉(咬筋=こうきん)へのボトックス注射です。筋肉の過剰な緊張をやわらげることで、噛みしめる力そのものを弱めるアプローチです。

歯ぎしり・食いしばりの軽減に加えて、張り出したエラがすっきりして見える美容的なメリットを感じる方もいます。

【知っておきたいこと】

効果は永久ではなく、数か月で少しずつ戻るため、必要に応じて繰り返します。自由診療(保険適用外)で、まれに腫れや一時的な違和感が出ることもあります。適応や回数は、診察のうえで決めるのが安心です。

ナイトガード
アプローチ
歯を守る・力を受け止める
こんな人に
主に夜間の歯ぎしり、歯のすり減りが気になる
費用の目安
診断がつけば保険適用の場合あり
特徴
毎晩の装着とお手入れが必要
ボトックス注射
アプローチ
噛む力そのものを弱める
こんな人に
強い食いしばり、エラの張りも気になる
費用の目安
自由診療(保険適用外)
特徴
数か月ごとに繰り返す

どちらが合うかは、症状やライフスタイルによって変わります。両方を組み合わせることもあります。


マウスピース・ボトックス治療は市原市の歯科で相談を

ナイトガードもボトックスも、かみ合わせの状態を診て、一人ひとりに合わせて行うことで、はじめて安心して続けられます。自己流より、まずは専門家に相談するのが近道です。

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まとめ

朝のあごの疲れ・日中の噛みしめ・原因不明の奥歯の痛みは、歯ぎしり・食いしばりのサインかもしれません。

  • まずは「舌をスポットへ・くちびる閉じて歯は離す」セルフケアから
  • オープン&クローズで舌を上にキープする力をつける
  • 「歯を離す」ふせんで日中のTCHに気づく習慣を
  • 就寝前は温めてゆるめる。市販ナイトガードは“つなぎ”として
  • 改善しないときはナイトガードや咬筋ボトックスを検討
  • マウスピース・ボトックスは歯科で相談するのが安心・安全

小さな違和感のうちにケアを始めれば、歯もあごも長く健康に保てます。気になるサインがあれば、早めに相談してみてくださいね。

【監修・執筆】とうま

日本歯周病学会認定歯科衛生士/歯科臨床麻酔認定歯科衛生士/ホワイトニングコーディネーター

20年以上の臨床経験を基に、日本歯周病学会認定歯科衛生士をはじめとする複数の専門資格を有し、質の高い医療提供を追求している。
予防歯科、歯周治療、ホワイトニング分野を中心に、専門的知識をわかりやすく伝え、患者さんやそのご家族が安心できる情報を発信。

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