先に結論だけ知りたい方へ
男性でも歯科衛生士は続けられる仕事です。私は2003年から20年以上働いてきました。少数派だからこその気づかいは必要ですが、患者さんや職場に頼ってもらえる場面も多くあります。これから目指す方は「男性歯科衛生士のなり方」もご覧ください。
男性歯科衛生士として20年以上働いてきました
私は2003年に歯科衛生士になりました。当時、男性の歯科衛生士は全国で7人と聞いていました。
今も男性はとても少ない職業です。日本歯科衛生士会の2024年の調査では、回答者5,385人のうち男性は19人(0.4%)でした。会員へのアンケートなので全国の正確な割合ではありませんが、少なさは伝わると思います。
この記事では、男性として働いてきて良かったこと、困ったこと、気をつけていることを正直に書きます。歯科衛生士を目指している男性や、いま働いていて周りに相談できる男性がいない方に届けばうれしいです。
なぜ男性の私が歯科衛生士になったのか
小さいころから定期健診に通っていて、その歯科医院で歯がきれいだと褒められたことが、うれしい思い出でした。進学を考えたときに歯科衛生士が国家資格だと知り、歯の健康に興味があったこと、そして母のすすめが大きなきっかけになりました。
こんなに男性が少ないと知ったのは、入学してからです。
学生のころに困ったこと
同級生で男性は私一人でした。友達はすぐにできましたが、更衣室は職員の更衣室を借りていました。実習中に困ることはありませんでしたが、男性が一人だけという恥ずかしさは常にありました。
はじめは「向いていない」と思っていました
正直に書くと、はじめのころは手先もトークも不器用で、この仕事は向いていないと思いながら、いつ辞めようかと考えていました。
それでも、日々の診療でできることが増え、スタッフや患者さんに信頼してもらえるようになると、少しずつ自信がつき、仕事がおもしろくなってきました。患者さんからの「ありがとう」や「また見てほしい」という言葉が、やりがいにつながっていきました。
向いていないと感じている方は、男性に限らず少なくないと思います。今では多くの患者さんを担当し、スタッフの教育にも関わるようになりました。はじめの不器用さだけで決めなくてもよかったと感じています。

男性で良かったと感じること
患者さんに受け入れてもらえる
はじめは心配でしたが、男性だからと断られることは思っていたより多くありませんでした。60代以上の女性の患者さんには、むしろ頼りにしてもらえることがよくあります。一方で、診察の前に「男の歯科衛生士以外で」と言われることもあります。
「今までいちばん痛くなく上手にやってもらえるから、安心して通えます」と言っていただいたことがあります。ご家族やお友達に私のことを紹介してくださった方もいました。ご夫婦やご家族、親・子・孫の3代を担当させていただくこともあります。
院長や職場から頼ってもらえる
人数が少ないぶん、目立ちます。頼まれごとも増えますが、ひとつずつ応えていくと信頼につながりました。院長が男性の場合は、医院の方針や困りごとを聞く機会が増えることもあります。
長く働き続けられた
2人目の子どものときには、3か月ほど育児休暇をいただきました。子どもが熱を出したときに病児保育を利用したこともあります。家庭の事情は人それぞれですが、周りの理解があって長く続けてこられました。
男性で困ったこと・気をつけていること
更衣室とトイレ
女性スタッフが中心の医院では、男性用の更衣室がないことも珍しくありません。私は男性歯科医師と同じ場所を使ったり、時間をずらして着替えたりしてきました。見学や面接のときに、着替える場所を確認しておくと安心です。
言葉や距離感
患者さんにもスタッフにも、相手が不快に感じない距離感を意識しています。
特に異性の患者さんには、声のかけ方や対応が雑にならないようにして、できるだけ丁寧な言葉づかいで、不安を取り除きながら接するようにしています。スタッフにも丁寧な言葉づかいを心がけ、ありがとうの気持ちを言葉にして伝えるようにしています。

相談できる同性が少ない
悩みは男性の歯科医師に相談することもありましたが、いちばん多かったのは、一緒に働く先輩の女性スタッフや、話をよく聞いてくれる女性スタッフでした。家族や妻に相談することもあります。同性でなくても、話を聞いてくれる人は職場にいました。
男性歯科衛生士のあるある
- どうして歯科衛生士になったのかを、よく聞かれる
- 患者さんに「先生」と呼ばれる
- 診療室に虫が出ると呼ばれる
就職や転職で感じたこと
新卒のころの就職活動では、「男性は雇ったことがない」「更衣室やトイレがない」という理由で、面接の前に断られたことがありました。
それでも、就職してからは、歯科医師から「話しやすく、頼りになる」と言ってもらえました。女性スタッフからは「人間関係が円滑になる」「重いものを運んだり、虫が出たときに対応してくれたりするから心強い」と言ってもらえることもあります。

私は2023年に転職しました。そのときに使ったサイトや進め方は「歯科衛生士の転職サイトの選び方」にまとめています。
お金と家族のこと
新卒のころの給与は心もとなかったのですが、歯科衛生士の給与は年々上がってきていると感じます。日本歯科衛生士会の調査でも、非常勤の時給と常勤の年収は前回より増加傾向でした。一般的な家庭として、普通に生活していけるレベルです。私の家は妻と共働きで、子ども2人の大学の費用もまかなえる生活を送っています。
認定歯科衛生士の資格を取ったことで、転職活動はスムーズに進みました。自分に自信が持てるようになり、患者さんに安心して診療を受けていただくための客観的な根拠にもなっています。給与を上げたい場合も、認定資格はあったほうがいいと思います。資格手当がある歯科医院もあります。
私が取った資格については「日本歯周病学会認定歯科衛生士の取り方」で詳しく書いています。
よくある質問
Q. 男性でも歯科衛生士になれますか?
A. なれます。歯科衛生士の国家資格に性別の制限はありません。学校によって男性の受け入れの状況が違うので、受験の前に確認しておきましょう。
Q. 男性だと患者さんに嫌がられませんか?
A. 私の場合、断られることは多くありませんでした。感じ方は患者さんによって違うので、説明を丁寧にして、不安そうなときは無理をしないようにしています。
Q. 周りに男性がいなくて不安です。
A. 私も同じでした。男性というより、一人の人として見られます。はじめは恥ずかしさや不安があると思いますが、次第に慣れてきます。挨拶や言葉づかい、接し方、明るさや面白さなど、人としての在り方を大切にすることが重要だと思います。
まとめ|少数派だからこそできることがある
- 男性の歯科衛生士はとても少ないけれど、20年以上続けられる仕事です
- 患者さんや職場に頼ってもらえる場面があります
- 更衣室や距離感など、気をつけることもあります
これから目指す方は「男性歯科衛生士のなり方」と「夜間部のある歯科衛生士学校」も参考にしてください。
【監修・執筆】とうま
日本歯周病学会認定歯科衛生士/歯科臨床麻酔認定歯科衛生士/ホワイトニングコーディネーター
20年以上の臨床経験を基に、日本歯周病学会認定歯科衛生士をはじめとする複数の専門資格を有し、質の高い医療提供を追求している。
予防歯科、歯周治療、ホワイトニング分野を中心に、専門的知識をわかりやすく伝え、患者さんやそのご家族が安心できる情報を発信。

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