「つわりで歯ブラシを口に入れると、オエッとなってしまう」
「歯磨き粉のにおいだけで気持ち悪い…でも、むし歯や歯周病も心配」
妊娠中、とくにつわりの時期は、毎日の歯みがきがつらくなりやすいですよね。この記事では、つわりで歯みがきがつらいときの対策と、妊娠中の歯磨き粉・歯ブラシの選び方を、歯科衛生士の立場からまとめました。
内容は、日本歯科医師会や日本小児歯科学会、日本歯科衛生士会、こども家庭庁(母子健康手帳)、自治体の妊婦向け資料をもとにしています。体調がすぐれないときは無理をせず、気になる症状があるときはかかりつけの産科・歯科医師に相談してください。
【結論】つわり中は「できるときに、できる分だけ」でOK
つわりの時期は、毎食後にしっかり磨けなくても大丈夫です。日本歯科医師会や母子健康手帳でも、気分のよいときに磨く、磨けないときはうがいをすることがすすめられています。
| つらいこと | まず試したいこと |
|---|---|
| 歯ブラシを入れるとえずく | ヘッドの小さい歯ブラシにする。顔を下に向け、前かがみで磨く |
| 歯磨き粉のにおい・味がつらい | 香りや味がおだやかなものに変える。つらい時期は歯磨き粉なしでもOK |
| 食後すぐは気持ち悪い | 食後にこだわらず、気分が落ち着いた時間帯に磨く |
| どうしても磨けない日 | 水やノンアルコールの洗口液でぶくぶくうがいをする |
| 吐いてしまった | まずは水でうがい。強くゴシゴシ磨くのは少し落ち着いてから |
はじめにそろえるなら、ヘッドの小さいやわらかめの歯ブラシと、香りや泡立ちがおだやかな歯磨き粉がおすすめです。
つわりや、歯ブラシでオエッとなる嘔吐反射(おうとはんしゃ)は、本当につらいですよね。歯みがきがつらいときは、前歯など磨きやすいところから始めて、えずきやすい奥歯は、できるだけ小さい歯ブラシで最後に磨くのがおすすめです。つらいところを後回しにするだけでも、ずいぶん楽になりますよ。
つわりで歯みがきがつらくなるのはなぜ?
つわり中は、においや味に敏感になったり、口の奥に物が触れただけで吐き気が起きやすくなったりします。歯ブラシが舌の奥に当たったり、歯磨き粉のミントの香りや泡が口に広がったりすることが、きっかけになりやすいのです。
自治体の妊婦向け資料でも、前かがみで磨き、舌にブラシが当たらないようにすると、えずきにくいことが紹介されています。
つわり中の歯みがき対策7つ
1. 気分のよい時間帯に磨く
「食後すぐに磨かなきゃ」と思わなくて大丈夫です。日本小児歯科学会は、食後ではなく、気分が落ち着いたときに磨くことをすすめています。朝はつらくても夜なら磨ける、という方も多いので、1日1回、体調のよいタイミングで丁寧に磨くことを目標にしましょう。
2. ヘッドの小さい歯ブラシに変える
ヘッドが大きいと、口の奥に当たってえずきやすくなります。日本歯科医師会もヘッドの小さな歯ブラシをすすめています。子ども用の小さな歯ブラシを使ってもよいとしている自治体もあります。
3. 顔を下に向けて、前かがみで磨く
上を向くと、唾液や歯磨き粉がのどの奥に流れて気持ち悪くなりやすいです。顔を少し下に向け、前かがみの姿勢で磨きましょう。
4. 舌の奥にブラシを当てない
奥歯を磨くときは、ブラシが舌の奥に触れないように注意します。口を大きく開けすぎず、頬側からブラシを入れると当たりにくくなります。
5. 小さく動かして、何回かに分けて磨く
一度に全部磨こうとせず、「今は前歯だけ」「次は奥歯」と何回かに分けてもかまいません。ブラシは大きく動かさず、小刻みに動かしましょう。
6. 歯磨き粉は香りの弱いものを少量。つらければなしでもOK
においや味の強い歯磨き粉をたくさん使うと、気持ち悪くなりやすくなります。自治体の資料では、つわりの間は無理に歯磨き粉を使わなくてよいとするものもあります。歯垢(プラーク)は歯ブラシだけでも落とせるので、まずは歯ブラシで汚れを落とすことを優先しましょう。
7. 磨けないときは、ぶくぶくうがい
どうしても歯ブラシを口に入れられない日は、水やノンアルコールの洗口液でぶくぶくうがいをしましょう。ただし、うがいだけでは歯についた歯垢は落ちないので、体調のよいときに歯ブラシで磨くことも続けてください。
テレビを見たり音楽を聴いたりしながらの「ながら磨き」で、気をまぎらわせるのもひとつの方法です。
妊娠中の歯磨き粉の選び方
香り・味がおだやかなもの
ミントの香りが強いものや、味が濃いものは、つわり中につらく感じやすいです。「マイルド」「低香味」などと書かれた、香りがおだやかなものを選びましょう。
泡立ちが少ないもの
泡が口いっぱいに広がると、吐き気のきっかけになることがあります。「低発泡」と書かれたものや、ジェル・泡(フォーム)タイプは、泡が広がりにくく使いやすいです。
できればフッ化物配合のもの
妊娠中は、むし歯になりやすい条件が重なります。多くの自治体が、妊娠中もフッ化物配合の歯磨き粉の使用をすすめています。体調が落ち着いているときは、フッ化物配合の歯磨き粉を使いましょう。
つわり中でも使いやすい歯磨き粉
チェックアップ スタンダード(ライオン)
歯科医院でよく使われている歯磨き粉で、フッ化物は1,450ppm。メーカーは低発泡・低香味・低研磨としていて、香りはマイルドピュアミントとマイルドシトラスミントの2種類です。泡や香りが控えめなので、時間をかけて磨きやすいのが特徴です(15歳以上向け)。
チェックアップ ジェル ミント(ライオン)
ジェルタイプで、低発泡・低香味・研磨剤無配合。大人向けのミント(甘い)はフッ化物1,450ppmです。ペーストより口の中でまとまりやすく、泡が苦手な方にも使いやすいタイプです。
チェックアップ フォーム(ライオン)
泡で出てくるタイプの歯磨き粉で、低香味・研磨剤無配合。メーカーは、味や刺激に敏感な方に適したマイルドな香味としています。すすぎが簡単なのも、つわり中にはうれしいポイントです。フッ化物は950ppmです。
バトラー マイルドペースト(サンスター)
低刺激タイプの薬用歯磨き粉で、香りはほのかなミント、泡立ちもやさしいタイプです。フッ化物配合です(濃度は公式ページに記載がありません)。
※どの商品も「つわり用」「妊婦用」としてメーカーがうたっているものではありません。香りや味の感じ方には個人差があるので、合うものを探してみてください。
つわり中は、歯磨き粉の味やにおい、泡立ちに敏感になりやすいものです。私は、つわり中の方には、泡立ちが控えめで、やさしい風味の歯磨き粉をおすすめしています。泡や香りが口に広がりにくいので、気持ち悪くなりにくく、落ち着いて磨きやすくなります。
歯ブラシは「ヘッドが小さい・やわらかめ」を
つわり中の歯ブラシは、ヘッドが小さく、毛がやわらかめのものがおすすめです。妊娠中は歯ぐきが腫れたり出血しやすくなったりするので、やわらかめのほうが歯ぐきにもやさしく当たります。
マミー17(オーラルケア)
歯科専売ですがネットで購入可能。ヘッドがとても小さい歯ブラシです。仕上げ磨き用ですが、超コンパクトヘッドで奥まで届きます。
奥歯がつらいならワンタフトブラシも
奥歯の奥にブラシを入れるとえずいてしまう方は、毛束がひとつだけの小さなワンタフトブラシを使うのも方法です。先が小さいので、口の奥まで入れずに奥歯を磨けます。選び方や使い方は、ワンタフトブラシのおすすめと使い方で解説しています。
磨けないときの洗口液は「ノンアルコール」を
歯ブラシがつらい日は、洗口液(マウスウォッシュ)でうがいをするのもよい方法です。妊娠中の洗口液について、日本の公的機関がはっきり示した注意は見当たりませんでしたが、アルコールの刺激が気になる方はノンアルコールタイプを選ぶと安心です。モンダミンのメーカーも、妊娠中・授乳中も使えるとしたうえで、アルコールが気になる方にはノンアルコールタイプをすすめています。
洗口液はあくまで補助です。歯についた歯垢は、うがいでは落ちません。体調のよいときに歯ブラシで磨きましょう。
吐いてしまったあとの口のケア
つわりで吐いてしまったあとは、胃酸で口の中が酸性に傾いています。日本小児歯科学会は、うがいをするだけでも違うとしています。まずは水でしっかりうがいをしましょう。
日本歯科医師会の資料では、酸性の飲食物をとったあとは、すぐに磨くより1時間ほどたってから磨くほうがよいとされています。吐いた直後について直接書かれたものではありませんが、吐いたあともまずはうがいで口の中を落ち着かせ、強くゴシゴシ磨くのは少し時間をおいてからにすると安心です。
吐くことが続くと、胃酸で歯が溶ける「酸蝕症」が起こることもあります。気になる方は、歯科医院で相談してください。
妊娠中に起こりやすい口のトラブル
歯ぐきが腫れる・血が出る(妊娠性歯肉炎)
妊娠中は女性ホルモンの影響で、歯ぐきの炎症が起こりやすくなります。日本小児歯科学会によると、とくに妊娠16週ごろから、歯ぐきの出血や腫れが起きやすくなります。ただし、歯垢がなければ起こりにくい、または軽くすむとされているので、歯みがきで歯垢を落とすことが大切です。
歯ぐきに、こぶのような腫れ(妊娠性エプーリス)ができることもあります。多くは出産後に自然に小さくなりますが、気になる場合は歯科医院で診てもらいましょう。
むし歯になりやすい
つわりで歯みがきが十分にできない、食事の回数が増える、唾液が酸性に傾きやすい、といった理由から、妊娠中はむし歯になりやすくなります。食べたらうがいをする、だらだら食べを避ける、といった工夫も役立ちます。
「赤ちゃんにカルシウムを取られて歯が弱くなる」と聞くことがありますが、日本歯科医師会は、一度できた歯からカルシウムが取られることはないと説明しています。
歯周病と早産の関係
進行した歯周病は、早産や低体重児出産のリスクを高めると報告されています。日本歯科医師会も、妊娠中の歯周病に注意するよう呼びかけています。歯ぐきの腫れや出血が続くときは、早めに歯科医院に相談しましょう。歯周病ケア向けの歯磨き粉は、歯周病の歯磨き粉ランキングでも紹介しています。
妊婦歯科健診は「安定期」に受けよう
つわりが落ち着いたら、歯科医院で健診を受けておくと安心です。日本歯科医師会は、つわりがおさまる妊娠4〜5か月ごろに健診を受け、治療が必要なら体調の安定した妊娠中期に行うことをすすめています。
多くの自治体では、妊婦歯科健診を行っています(無料の地域もあります)。母子健康手帳と一緒に受診券が配られていることもあるので、お住まいの自治体の案内を確認してみてください。受診するときは母子健康手帳を持参し、妊娠していること・産科で受けている注意を歯科医師に伝えましょう。
私は、妊婦さんが来院されたときは、まず出産予定日と最近の体調を確認しています。診療はできるだけ短い時間で終わるように心がけ、同じ姿勢が長く続かないように気をつけています。途中でも気分を確認しながら、その日の体調に合わせて進めていますので、つらいときは遠慮なく伝えてくださいね。妊娠中も、できるだけ定期健診に来ていただけるようにおすすめしています。
よくある質問
妊娠中にフッ素入りの歯磨き粉を使っても大丈夫?
多くの自治体が、妊娠中もフッ化物配合の歯磨き粉の使用をすすめています。つわりでつらい時期は無理に使わなくてかまいませんが、体調が落ち着いたら、フッ化物配合の歯磨き粉で磨きましょう。
歯磨き粉なしで磨いても意味はある?
あります。歯垢は歯ブラシでこすることで落とせます。つらい時期は歯磨き粉なしで歯ブラシだけでも磨き、体調がよくなってから歯磨き粉を使いましょう。
つわりで歯みがきできないと、むし歯になる?
磨けない日が続くと、むし歯や歯ぐきの炎症が起こりやすくなります。ただ、つわりの時期は誰でもつらいものです。うがいをする、気分のよいときに1回だけでも磨く、など、できる範囲でケアを続けましょう。つわりが落ち着いたら、歯科医院で健診を受けておくと安心です。
妊娠中の歯科治療やレントゲン、麻酔は大丈夫?
日本歯科医師会は、歯科のレントゲンは線量がごくわずかで、お腹の赤ちゃんへの影響はほとんどないとしています。歯科の局所麻酔も、通常の量なら赤ちゃんへの影響はないと説明しています。治療の時期や内容は、歯科医師と相談して決めましょう。
まとめ|つわり中は無理せず、できるケアを続けよう
- つわり中は気分のよいときに磨く。磨けない日はうがいだけでもOK
- ヘッドの小さい歯ブラシで、顔を下に向けて前かがみに
- 歯磨き粉は香り・泡立ちがおだやかなものを少量。つらければなしでもOK
- 吐いたあとはまず水でうがい。強く磨くのは少し落ち着いてから
- 妊娠中は歯ぐきの炎症やむし歯が起こりやすい。安定期に歯科健診を
【歯科衛生士として:つわりでつらい妊婦さんへ、最後にひとこと】
参考
- 日本歯科医師会 テーマパーク8020「妊娠時の歯やお口のケア」
- 日本歯科医師会「妊娠時の歯やお口のケア Q&A」
- 日本小児歯科学会「こどもたちの口と歯の質問箱(妊娠期)」
- 日本歯科衛生士会「特に気をつけたい妊娠中のオーラルケア」
- こども家庭庁 母子健康手帳 任意記載事項「すこやかな妊娠と出産のために」
- 日本臨床歯周病学会「歯周病が全身に及ぼす影響」
- 8020推進財団「胎児期」
- 日本歯科医師会 保健指導用教材(酸蝕症)
- 練馬区「妊娠中の歯と口の健康」
- 大垣市 妊婦さん向けチラシ
- アース製薬 モンダミン よくある質問
- ライオン歯科材 チェックアップ スタンダード
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- ライオン歯科材 チェックアップ フォーム
- サンスター バトラー マイルドペースト
【監修・執筆】とうま
日本歯周病学会認定歯科衛生士/歯科臨床麻酔認定歯科衛生士/ホワイトニングコーディネーター
20年以上の臨床経験を基に、日本歯周病学会認定歯科衛生士をはじめとする複数の専門資格を有し、質の高い医療提供を追求している。
予防歯科、歯周治療、ホワイトニング分野を中心に、専門的知識をわかりやすく伝え、患者さんやそのご家族が安心できる情報を発信。

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