「家族の介護で歯みがきをしてあげたいけれど、何を使えばいいの?」
「スポンジブラシって、どうやって使うのが正解?」
ドラッグストアの介護コーナーには、スポンジブラシ、介護用歯ブラシ、口腔ケア用のウェットティッシュなどが並んでいて、どれが必要なのか迷いますよね。
この記事では、ご家族が自宅で口腔ケア(お口のケア)をするときに使う道具の選び方と使い方を、歯科衛生士の立場からまとめました。商品の特徴や注意点は、メーカーの公式情報をもとにしています。
あわせて、寝たきりの方・うがいができない方の手順や、口を開けてくれない・嫌がるときの工夫、安全に行うための注意点もお伝えします。
【結論】まずは「歯ブラシ・スポンジブラシ・ウェットティッシュ」の3つ
介護の口腔ケアで使う道具は、役割がそれぞれ違います。まずは次の表で、何に使う道具なのかを確認してください。
| 道具 | おもに使う場所 | こんなときに |
|---|---|---|
| 介護用歯ブラシ | 歯・歯と歯ぐきのさかい目 | 歯が残っている方の毎日の歯みがきに |
| スポンジブラシ | 頬の内側・上あご・舌など、やわらかいところ | 歯みがきのあとの仕上げ、歯がない方のケアに |
| 口腔ケア用ウェットティッシュ | 歯・歯ぐき・頬の内側 | うがいができない方の拭き取りに |

歯の汚れ(歯垢)は、ネバネバとくっついていて、うがいやスポンジだけでは落ちにくい汚れです。歯があるところは歯ブラシ、頬の内側や舌などのやわらかいところはスポンジブラシと使い分けるのが基本です。うがいができない方は、歯磨き後にウェットティッシュで汚れを拭き取って口の外に出すことが大切です。
「何から買えばいいか分からない」という方は、まずは次の3つから始めると、ひととおりのケアができます。
最初から完璧を目指さなくて大丈夫です。まずは口腔ケア用のウェットティッシュで歯や頬の内側を拭うだけ、スポンジブラシを使うだけでもOK。1日1回、口のケアをする時間をつくることから始めてみましょう。できれば座るか、上体を起こして、むせにくい姿勢で行うのがおすすめです。慣れてきて歯が残っている方なら、少しずつ歯ブラシも取り入れてみてくださいね。
スポンジブラシの選び方とおすすめ
スポンジブラシは、棒の先にスポンジがついた口腔ケア用品です。歯ブラシでは痛くなりやすい頬の内側・唇の裏・上あご・舌の汚れや、たまった唾液を拭き取るのに使います。
スポンジブラシを選ぶ3つのポイント

- 個包装の使い捨てタイプ:スポンジは洗っても汚れが落ちにくいので、メーカーも「使い捨て」としています。1本ずつ包装されていると清潔に保管できます
- スポンジと軸がしっかりついているもの:使う前に軽く引っぱって、外れないか確認できるものを選びましょう
- スポンジの大きさ:口が大きく開く方は大きめ、口が開きにくい方は小さめが使いやすいです
①オーラルプラス 口腔ケアスポンジ(アサヒグループ食品)
先が細くなっていて口に入れやすく、やわらかいスポンジでこすっても痛くなりにくいのが特徴です。軸はポリプロピレン製で水に強く、奥まで届く長さがあります。10本・30本・60本入りがあり、どれも個包装です。
ドラッグストアでもよく見かける定番品なので、はじめてのスポンジブラシとして選びやすい商品です。
②ハビナース 口腔ケアスポンジブラシ(ピジョンタヒラ)
ハビナースの「クリンスマイル」シリーズのスポンジブラシです。全長155mmで、スポンジの面が広く、軸の先が六角形になっていて指先で回しやすい作りです。10本・60本・250本入りがあり、個包装です。
メーカーの注意書きでは、介護を受けるご本人には使わせない(ご家族や介護者が使う)とされています。誤って飲み込むのを防ぐためです。
100均やドラッグストアのスポンジブラシでもいい?
スポンジブラシは、ドラッグストアのほか、100円ショップで見かけることもあります。どこで買う場合も、「個包装か」「スポンジと軸がしっかりついているか」「使い捨てとして使えるか」を確認しましょう。ケアの途中でスポンジがちぎれると、口の中に残ったり、飲み込んだりするおそれがあります。
介護用歯ブラシの選び方とおすすめ
歯が残っている方には、スポンジブラシだけでなく歯ブラシも必要です。介護の歯みがきでは、自分で磨くときとは少し違う視点で選びます。
介護用歯ブラシを選ぶ3つのポイント

- 毛はやわらかめ:歯ぐきが弱っていたり、出血しやすかったりする方が多いため
- ヘッドが小さめ、または口が小さく開くだけで届く形:口を大きく開けているのがつらい方にも使いやすい
- 介助する人が持ちやすい柄:長さや太さ、滑りにくさをチェック
口が開きにくい方や、頬の内側に食べかすや痰(たん)がたまりやすい方には、丸い形の「球状ブラシ」も選択肢になります。
①オーラルプラス 口腔ケア歯ブラシ(アサヒグループ食品)
やわらかい毛を平たく360°に植えたブラシで、どの向きからでも当てやすいのが特徴です。軸が細めでヘッドが大きく、狭いすき間にも入りやすい形です。持ち手は六角形で、介助する人が握りやすくなっています。
②ハビナース 口腔ケア歯ブラシ(ピジョンタヒラ)
やわらかめの極細毛で、口の開きが小さくても奥歯まで届くように作られています。介助する人が持ちやすいグリップです。メーカーの注意書きには、ご本人がブラシを噛んで離さないときは、無理に引き抜かないことも書かれています。
③柄付くるリーナブラシ(オーラルケア)
長い柄の先に丸いブラシがついた「球状ブラシ」です。しなる柄で口の奥まで届き、頬や唇の内側にたまった食べかすや痰をからめ取るように使います。メーカーは、口が開きにくい方には毛の短い「ミニ」をすすめています。
④モアブラシ(オーラルケア)
綿毛のような「超やわらか」な毛の球状ブラシです。敏感になっている粘膜でも当てやすく、食べかすや痰をからめ取ります。毛の短い「ミニモアブラシ」もあります。
介護で電動歯ブラシは使える?
ご本人が自分で磨ける方なら、電動歯ブラシも選択肢のひとつです。一方で、介助する人が電動歯ブラシを使う場合は、振動や音を嫌がる方もいること、唾液や水がたまりやすいことに注意が必要です。むせやすい方には、まずは手みがき用の介護用歯ブラシをおすすめします。
うがいができない方に:口腔ケア用ウェットティッシュ
うがいができない方は、はがした汚れを口の外に出すのが難しくなります。そこで役立つのが、指に巻いて使う口腔ケア用のウェットティッシュです。

オーラルプラス 口腔ケアウエッティー(アサヒグループ食品)
ノンアルコールで、保湿成分(ヒアルロン酸・トレハロース・セラミド)が入ったウェットティッシュです。ミントの「スッキリタイプ」と「マイルドタイプ」があります。メーカーは、上体を起こした姿勢で、指に巻いて奥から手前へやさしく拭くように案内しています。
ほかのメーカーにも口腔ケア用のウェットティッシュがありますが、エタノール(アルコール)が入っているものもあります。しみやすい方や乾燥が気になる方は、成分表示を確認して選びましょう。
舌のケアには、やわらかい舌ブラシ
舌の表面の白っぽい汚れ(舌苔)が気になるときは、スポンジブラシのほか、やわらかい舌ブラシも使えます。強くこすると舌を傷めるので、舌にのせて、奥から手前へ軽く引くのが基本です。奥に入れすぎると吐き気が出ることがあるので注意しましょう。
吸引歯ブラシは家庭で使える?
「吸引歯ブラシ」は、チューブを吸引器につないで、唾液や汚れを吸い取りながら磨けるブラシです。どの商品も別に吸引器が必要で、メーカーは、誤嚥(ごえん:食べ物や唾液が気管に入ること)の心配が大きい方や、チューブで栄養をとっている方などを対象としています。
吸引器を使うケアは、ご本人の状態によって注意点が変わります。家庭で使いたい場合は、主治医や訪問看護、訪問歯科に相談してから始めましょう。
スポンジブラシの使い方|正しい手順
ここからは、スポンジブラシの使い方を順番にお伝えします。東京都歯科医師会と東京都の在宅療養者向けリーフレット、メーカーの説明をもとにしています。
準備するもの
- スポンジブラシ(2〜3本あると、汚れたら交換できて便利です)
- コップ2つ(スポンジをすすぐ用と、水を含ませる用)
- ガーゼやティッシュ(スポンジの水気を取る用)
- 口の中が乾いている方は、口腔保湿ジェル
手順

- 姿勢を整える:できるだけ体を起こし、あごを軽く引いた姿勢にします(くわしくは次の章で)
- スポンジと軸がしっかりついているか確認:軽く引っぱって、外れないかを見ます
- 水を含ませて、よく絞る:さらにガーゼなどで水気を取ります。水分が多いと、のどに流れこんでむせる原因になります
- 奥から手前へ、回しながら拭く:頬の内側・唇の裏・上あご・歯ぐきを、スポンジをくるくる回しながらやさしく拭き取ります
- 汚れたらすすいで、また絞る:コップの水でスポンジをすすぎ、同じように絞ってから続けます
- 舌は最後に、奥から手前へ数回:力を入れず、なでるように拭きます
- 使い終わったら捨てる:スポンジブラシは使い捨てです
口の中が乾いて汚れがこびりついているときは、無理にこすらず、先に保湿ジェルを塗って少し時間をおき、汚れをやわらかくしてから拭き取りましょう。保湿ジェルの選び方や塗り方は、介護向けの口腔保湿ジェルの記事でくわしく解説しています。
スポンジブラシでやってはいけないこと
- 水を含ませたまま使う:のどに水が流れこみ、むせや誤嚥の原因になります
- 噛まれたまま引っぱる:スポンジがちぎれることがあります。ちぎれたら、すぐに取り除きましょう
- 洗って何度も使う:汚れが残りやすく、劣化したスポンジが外れるおそれがあります
- 介護を受けるご本人だけで使わせる:飲み込んでしまうおそれがあるため、ご家族や介護者が持って使います
寝たきり・うがいができない方の歯みがき手順
姿勢:体を起こして、あごを引く
誤嚥を防ぐために、できれば座った姿勢で行います。ベッドの上なら背もたれを起こし、頭の下に枕などを入れて、あごを軽く引いた姿勢にしましょう。あごを引くと、口の中に水がたまりやすく、のどに流れこみにくくなります。

体を起こすのが難しい場合は、頭を高くするか、横向きにします。体の片側にまひがある方は、まひのない側を下にするのが一般的です。
口腔ケアの流れ

- 声をかける:「これから歯みがきしますね」と伝えてから始めます。いきなり口に触らないのが大切です
- 口の中を確認する:唇や歯ぐきの腫れ・出血、食べかす、乾燥の具合を見ます
- 乾いていたら保湿する:保湿ジェルなどで、こびりついた汚れをやわらかくします
- 歯を磨く:やわらかい歯ブラシで、小刻みにやさしく。歯ブラシはコップの水でこまめにすすぎます
- スポンジブラシで粘膜と舌を拭く:奥から手前へ、汚れを集めるように
- ウェットティッシュやスポンジで仕上げの拭き取り:うがいができない方は、ここで汚れと水分を口の外に出します
- 必要に応じて保湿する:乾燥しやすい方は、最後に保湿ジェルを薄く塗ります
うがいができる方は、ガーグルベースン(口をすすいだ水を受ける容器)などを口元に当てて、顔を少し横に傾けて吐き出してもらいます。吐き出せない方は、スポンジブラシやウェットティッシュで水分を拭き取りましょう。
入れ歯を使っている方は、ケアの前に入れ歯を外し、入れ歯は別に洗います。入れ歯の洗い方は、入れ歯のお手入れの記事を参考にしてください。
どのくらいの頻度で行う?
理想は毎食後ですが、介護をするご家族の負担も大きいですよね。まずは1日1回、寝る前などに時間をとって丁寧に行うことから始めてみてください。食後は、口に残った食べかすを拭き取るだけでも違います。
口から食事をとっていない方も、口の中は汚れます。唾液が減って乾きやすくなるため、口腔ケアは同じように大切です。
口を開けない・嫌がるときの工夫
口腔ケアを嫌がったり、口を開けてくれなかったりするのは、介護の現場でもよくあることです。無理に開けようとすると、ますます嫌がるようになってしまいます。鹿児島県の介護者向けの手引きでは、次のような工夫が紹介されています。

- 口から遠いところから触れていく:手のひら → 腕 → 肩 → 頬、と少しずつ顔に近づけます
- 会話で安心してもらう:何をするのかを伝え、ゆっくり話しかけます
- 口のまわりをほぐす:頬や首まわりをやさしくマッサージしてから始めます
- できるところだけでもOK:拒否が強い日は、歯の表側だけ、頬の内側だけ、と少しずつで構いません
- 毎日の流れの中で習慣にする:「ご飯を食べたら歯みがき」のように、同じ時間・同じ流れで行います
嫌がる理由が、むし歯や口内炎、入れ歯が合わないなどの「痛み」のこともあります。急に嫌がるようになったときは、口の中に痛いところがないか確認し、歯科医院や訪問歯科に相談しましょう。
また、ブラシを噛んで離さないときは、無理に引き抜かないでください。少し待つと、口の力がゆるむことがあります。
私が現場でしているのは、ケアを始める数分前に歯ブラシを見せて、「このあと歯みがきしますね」と声をかけておくことです。いきなり始めず、心の準備をしてもらう時間をつくります。眠っているときは、まず起こして、しっかり目が覚めてから始めます。嫌がるときも、その日にできることを少しだけ行えばOKです。大切なのは、短い時間でも毎日続けて「歯みがきの時間」を習慣にしていくことです。
口腔ケアと誤嚥性肺炎の関係
誤嚥性肺炎は、唾液や食べ物と一緒に、口の中の細菌が気管に入ることで起こる肺炎です。日本歯科医師会は、歯科医師・歯科衛生士が介護施設で口腔ケアを続けたところ、肺炎になる人が減ったという研究を紹介しています。
口の中の細菌を減らすことは、誤嚥性肺炎のリスクを下げることにつながると考えられています。ただし、口腔ケアだけで肺炎を防げるわけではありません。
注意したいのは、はがした汚れを口の中に残したままにしないことです。日本歯科医師会も、水分の多いスポンジや大量の水を使わないこと、はがした汚れをきちんと回収することの大切さを伝えています。「磨く」だけでなく「拭き取って外に出す」までが口腔ケアです。
家族ができるケアと、プロに相談したいサイン
歯ブラシやスポンジブラシを使って、歯・口の粘膜・舌の汚れを取る日常的な口腔ケアは、厚生労働省の通知でも、重い歯周病などがない場合は医療行為にあたらないものとして整理されています。ご家族が毎日のケアをすることは、とても大切です。
一方で、次のようなときは、ご家族だけで抱えこまず、歯科医院や訪問歯科、主治医に相談しましょう。

- 歯ぐきからの出血や腫れが続く
- 口内炎や傷がなかなか治らない
- 入れ歯が合わない、痛がる
- 食事中や口腔ケア中にむせることが増えた
- 口を開けられない、痛みで嫌がる
- 吸引器を使ったケアが必要か迷っている
通院が難しい方は、自宅や施設に来てもらえる訪問歯科という方法もあります。ケアマネジャーさんに相談すると、地域の訪問歯科を紹介してもらえることがあります。
よくある質問
スポンジブラシは洗って何回も使える?
使い捨てです。メーカーも、スポンジは洗っても汚れが落ちにくく、くり返し使うと細菌を口の中に戻すことになったり、劣化したスポンジが外れたりするおそれがあるとしています。
スポンジブラシは何のために使うの?
歯ブラシでは痛くなりやすい頬の内側・上あご・舌などの汚れや、たまった唾液を拭き取るためです。うがいができない方のケアにも役立ちます。ただし、歯についた歯垢はスポンジでは落ちにくいので、歯がある方は歯ブラシと組み合わせて使いましょう。
スポンジブラシはドラッグストアで買える?
多くのドラッグストアの介護用品コーナーで買えます。通販なら、本数の多い箱入りも選べます。
歯磨き粉は使ったほうがいい?
うがいができない方は、泡立ちやすい歯磨き粉を多く使うと、口の中に泡や水分が残りやすくなります。使う場合はごく少量にするか、泡立ちにくいジェルタイプを選ぶなど、ご本人の飲み込む力に合わせましょう。迷うときは、歯科医院や訪問歯科で相談してください。
まとめ|道具を使い分けて、無理なく続けよう
- 歯は介護用歯ブラシ、頬の内側や舌はスポンジブラシと使い分ける
- スポンジブラシはよく絞って、奥から手前へ。使い捨てにする
- うがいができない方は、ウェットティッシュで拭き取って汚れを外に出す
- 体を起こし、あごを引いた姿勢で誤嚥を防ぐ
- 嫌がるときは無理をせず、できるところから少しずつ
- 出血・痛み・むせが気になるときは、歯科医院や訪問歯科に相談する
介護の毎日は、大変なことも多いと思います。口腔ケアは、1日1回、無理なく続けられる形をつくれるのが理想です。でも、ご家族だけで全部を抱えこむ必要はありません。訪問歯科などのプロの力も上手に借りながら、できる範囲で続けていきましょうね。
参考
- 東京都歯科医師会・東京都「お家でできる口腔ケア~在宅療養者の口腔ケア~」
- 日本歯科医師会「要介護者への口腔ケア」
- 鹿児島県 大島郡歯科医師会ほか「~介護者向け~お口の健康の手引き」
- 厚生労働省「医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について(通知)」
- 健康長寿ネット「口腔ケアの具体的方法」
- アサヒグループ食品 オーラルプラス 口腔ケア用品
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【監修・執筆】とうま
日本歯周病学会認定歯科衛生士/歯科臨床麻酔認定歯科衛生士/ホワイトニングコーディネーター
20年以上の臨床経験を基に、日本歯周病学会認定歯科衛生士をはじめとする複数の専門資格を有し、質の高い医療提供を追求している。
予防歯科、歯周治療、ホワイトニング分野を中心に、専門的知識をわかりやすく伝え、患者さんやそのご家族が安心できる情報を発信。

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